二字No. 25放熱

真田志朗。工作班長。数々の発明を成し遂げ、地球の頭脳、天才科学者の名を欲しいままにする男。その活躍ぶりは縦横無尽。ブリッジクルーとして第一艦橋での業務を行うと同時に、技師長として現場の最前線にも張り付く。部下たちは、疲れを知らぬ仕事振りを評して、148時間働く男と呼ぶ。

さて真田の148時間の締めくくりは、工作班長としての管理職業務である。1日の終わりに、部下たちの業務日報に目を通す。工作班の全スタッフから提出される日報をひとつひとつチェックし、不明点があればコメントを付けて送り返す。毎日のことで日々同じ内容の報告も多く、事故報告などが含まれることは割合としては少ない。真田はそういった単調な内容の報告にすべて目を通し、それらの無味乾燥な報告から、艦全体としての整備の状況、強化すべき点、改良すべき点などを把握し、艦長へ上げる報告書を作成する。さらに個々のスタッフの業務状況、ひととなりを測り、班長として必要な指導を行う。

「ん?」
部下たちの日報をかなりのスピードで読み進めていた真田は、画面をスクロールする手を停めた。

事故報告:

第二砲塔の制御装置に放熱異常(制御装置の発熱)。
制御盤のカバーを取り外して内部を確認。制御コンピュータの発熱によるものと判明。原因不明のため、当該コンピュータを回収して検査をする予定。放熱板および冷却装置の異常、あるいはCPUが何らかの要因により通常よりも発熱したことによると予測される。
なお、制御盤カバーの内側全面にグラビア写真(女性裸体)が貼り付けてあった。砲術員の趣味によるものと思われる。

工作班員の中でも超がつく生真面目な男の報告である。

班長コメント:

放熱板の異常ではなくCPUの異常によるものである。グラビア写真に反応したものと思われる。
というのは冗談である。放熱板の異常でもCPUの異常でもない。グラビア写真が全面に貼ってあったため、通気が悪くなったのだと思われる。コンピュータを回収する前に、写真を撤去し私室に貼るように指示せよ。

真田は返信を入れ、次の日報に取り掛かった。
その日の工作班報告。「艦内整備に異常なし。」

   15 Sep. 2008

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